恋愛関係を左右する試し行動:男女別の特徴と対処法
【記事公開日】2025/5/9
【最終更新日】2025/5/9
目次
みなさんは「試し行動」という言葉をご存知でしょうか?
試し行動は、「相手の反応を確かめるために、わざと悪い行動をしたり、反抗的な態度を示したりする行為」を指します。本来は幼稚園・保育園などの保育業界で使われる言葉なのですが、恋愛の場面でも用いられる場合があります。
恋愛関係において、相手の気持ちを確かめたり、関係性の距離感を調整したりする「試し行動」は、関係を深めるきっかけになることもあれば、逆にこじらせてしまうこともある、両刃の剣と言えるでしょう。
今回、心理学の研究を引用しつつ、「つい試し行動をしてしまうのはなぜ?」「相手から試し行動をされた場合の対処法は?」などの疑問にお答えしていきます。
試し行動の心理的背景
男女や年齢関係なく、恋愛関係の相手の気を引くために「試し行動」をとってしまうことがあります。
「ヤンデレ」や「束縛」、「重い女」「メンヘラ」なんて言葉で片付けてしまう場合も多い試し行動ですが、その根底には複雑な心理が隠されています。特に自分に自信がない人や、相手に依存する傾向のある人が、自分が本当に愛されているか?を確かめるために試し行動をすることがあります。
次の章では、試し行動の原因とされがちな「愛着障害」についてみていきます。
愛着障害とは何か?
愛着障害とは、主に幼少期に、安定した情緒的な絆を形成できなかったときに起こりやすい、心理的な課題です。場合によっては他人との信頼関係を築くことに苦労しやすくなり、対人関係が極端になります。
幼少期には「わがまま」で片付くかもしれませんが、大人になっていざ恋愛、となったときは大変です。常に見捨てられるのではないかという不安(見捨てられ不安)を抱えやすいため、パートナーの言動に過敏に反応したり、安心感を求めて「試し行動」を繰り返したりすることがあります。
試し行動をする人の心理は、「この人との関係は正しいはず」という希望を確かめるため、あるいは「結局はうまくいかないだろう」という根深い恐れを確認するために、パートナーの献身や愛情を「試す」のです。
子ども時代の保育者との関係
ちょっと専門的な話を1つ。
イギリス出身の精神科医、ジョン・ボウルビィによって確立された愛着理論によれば、子どもが養育者(多くは母親)と形成する情緒的な絆は、その後の心理的・社会的発達、特に大人になってからの恋愛行動に影響します。
養育者の対応が一貫していなかったり 、無関心であったり、あるいは虐待など不適切な養育環境であったりすると、「不安型愛着」や「回避型愛着」といった不安定な愛着スタイルが形成されやすく、これらが成人後の恋愛における「試し行動」の背景になるのです。
成人期において、不安定な愛着が持続する場合、個人は無意識のうちに、より「大きな」感情的シグナル、つまり試し行動に訴えてパートナーの注意を引くようになるんです。
アダルトチルドレンと回避依存症
アダルトチルドレン という概念も、この機会に知っておいてください。子ども時代に複雑な家庭で育ち、適切な愛情や安心感を得られなかった経験を持つ成人、それがアダルトチルドレンです。
病気ではありませんが、見捨てられるんじゃないかという不安、低い自己肯定感、強い承認欲求、被害者意識や心理的孤立感を抱えやすい傾向があります。
こうしたアダルトチルドレンは、一見、自立しているように見えても、内面では「本当の自分を知られたら見捨てられるのではないか」という強い不安を抱えており、その不安から相手の気持ちを確かめるために「試し行動」として現れることがあります。
男性の試し行動の特徴と対処法
「試し行動」は男女で傾向が違います。まず、男性が恋愛関係で見せる試し行動を見ていきましょう。
連絡頻度が変わる
自分の存在が相手にとってどれだけ重要か、相手の関心度を測りたいため、急に連絡の頻度を減らしたり、返信を意図的に遅らせたりします。
これは、男性が女性に対して、自分が大事だよね?気になっているよね?と、確かめるためのアクションです。女性からすれば「聞けばいいじゃん」と思いがちですが。そこは男のプライド、ということでしょう。
嫉妬させるような行動をする
相手が自分にどれだけ執着しているか、独占欲があるかを確かめるため、 他の異性の話をしたり、SNSで他の人と仲良くしたりします。
試す側にとってはリスクが高いものの、見返りが大きい戦略といえるでしょう。
無視する、距離をとるなど
相手が自分を追いかけてくるかを試すため、急にそっけなくなったり連絡に対して無反応になったりすることがあります。
注意点
こうした行動をとる男性は、つい感情的になってしまっているのかも。こうした「試し行動」をされた女性の皆さんは、必ずしも悪意があるわけではないということを理解しておきましょう。
男性の「試し行動」には、根底に「優位でいたい」「自分がコントロールしたい」という思いがあります。
女性の試し行動の特徴と対処法
女性の試し行動もまた、愛情の確認や関係性の安定を求める心理から生じます。ただ、その表現方法が男性とちょっと違います。
感情的な不満やわがままをぶつけてくる
相手がどれだけ自分を大切に思っているか確認するため、「最近全然かまってくれない」「もっと会いたい」など、わざとわがままを言って相手の反応を見ることがあります。
連絡の頻度や内容で試す
関心の度合いを測るため、わざと返信を遅らせてくることがあります。あるいは短いメッセージを送って、相手がどれくらい積極的に連絡を続けてくるか観察することもあります。
ただ反応してほしいのではなく、どれほど気にかけているかを女性は確かめているのです。
他の異性を匂わす
「〇〇さんにデートに誘われたんだよね」など、ほかの男性の存在を匂わせることも。これは、女性のパートナーが自分のために「戦ってくれるか」を評価したいがための行動です。優しさから男性側が何も考えず「いいじゃん」というリアクションを取るのは、逆効果である場合がほとんどです。
感情の深さを探る深い質問や沈黙
「私のどこが好き?」「将来どうしたい?」と真剣な質問をしたと思ったら、今度は急に黙り込んで相手の反応を見ることもあります。相手の本音や関係への真剣さ、感情の深さを確かめたい時にこうした質問が出てきます。
注意点
男性が女性の「試し行動」に対して注意しておきたいのは、女性が「安心感」を求めるために「試し行動」をすることが多い、ということです。承認欲求や、構ってほしいという気持ちがあるため、男性側のリアクションに満足できなかったり精神的に不安定だったりすると、激しい怒りや「死にたい」という言葉、自傷行為などにエスカレートする場合もあります。
試し行動への対処法
恋人に試し行動をされたとき、戸惑ったり、時には不快に感じたりすることもあるでしょう。しかし、その行動の裏にある意図を理解し、誠実に対応すると、二人の関係はより良いものになります。ここからは対処法を5つ厳選してお届けします。
1. 冷静に状況を観察
「試し行動」は、相手の不安、愛情の確認、または関係への自信のなさからくることが多い、というのはすでにお伝えしたとおりです。
まずは、感情的にならず、相手が何を求めているのかチェック。相手の行動パターンを観察して、「試し行動」かどうかを判断しましょう。しっかり観察してあげることで、その引き金となる要因を特定することができます。「パートナーは仕事で非常に忙しいときに私を試す傾向がある」とか、「些細な意見の不一致の後に試す」といったパターンに気づくかもしれません。うまくいけば試し行動の根本原因をなくせます。
2. 相手の不安を和らげる
自分の気持ちを正直に伝えるのが効果的です。「試し行動=不安のサイン」と捉え、相手に安心感を与える言葉や行動をしましょう。攻撃的な言動や、反発するのは絶対NG!感情的にならず、相手が本音を話しやすい雰囲気を作ることが重要です。
3. 試し行動に乗る
軽い試し行動なら、適度に乗ることが有効な場合もあります。「もっとかまって」というような行動であれば、相手の期待に応えて安心させるのも一つの手です。例えば、「じゃあ明日は一緒に過ごそう!」と提案してみるのもいいかも。
しかし、嫉妬を煽るような行動や、度を超えた試し行動には過剰に反応しないことが重要です。自分のペースを保ちましょう。
4. どこまでの試し行動なら許せるかを決める
「試し行動」がストレス…。そんな時には、「どこまでの試し行動がストレスか?」を自分のなかではっきりさせてみては。
例えば、急に連絡してくるのはOKだけど、連絡がつかなかったことに怒るのはダメ、など、どこまで許せるかの境界線がきっとあるはずです。そして、そのことを相手に伝えましょう。相手を否定せず、関係を良くするための提案として伝えることがポイントです。
境界線を設定し、それをしっかり守ることで、相手は徐々にパターンを理解するようになります。それが結果として安心感につながっていきます。
5. 愛情表現をする
定期的に「君のこと大好きだよ」と伝えたり、相手の良いところは褒めたりなど、日頃からの定期的な愛情表現はものすごく効果的。お互いが安心できる関係なら、「試し行動」の必要性がなくなり。行動回数が減っていきます。
水や食事のように、「安心感」という欲求を満たしてあげましょう。「試し行動」に対する予防策として機能します。
シチュエーション別対処法
ここからはシチュエーション別の「試し行動」対処法をお伝えします。
相手が急にそっけなくなった時
まずは心配していることを優しく伝え、理由を尋ねてみましょう。「最近ちょっと元気ない?何かあったら話してほしいな」など。
相手が話したがらない場合は、無理に聞き出そうとせず、少し時間をおいて様子を見ることも大切です。
他の異性の話題を出して嫉妬を煽る場合
過剰に反応したり、感情的に問い詰めたりするのは相手の思う壺かもしれません。例えば「他の男とデートする」と言ってきたパートナーには、冷静に、「へえ、楽しそうじゃん!でも俺は君と一緒にいるのが一番だよ」というように、軽く受け流しつつも、自分の気持ちをしっかりと伝えるのが効果的です。
「もっとかまって」とわがままを言う場合
まずは相手の「もっと関わってほしい」という気持ちを受け止め、前向きに応じる姿勢を見せましょう。「じゃあ今週はデートの時間増やそう!」と提案しつつ、「何か寂しかったことあった?」と、わがままの裏にある本音や具体的な出来事について優しく尋ねてみることが大切です。
わがままな要求に対して、質の高い時間を増やすことを提案して、コミュニケーションを促すのです。
まとめ
恋愛関係における「試し行動」は、多くの場合、相手の気持ちを確かめたい、自分の価値を確認したいという、不安や自信のなさから生じる複雑な心理の表れです。
男女の表現方法に違いはあるかもしれませんが、根底にあるのは多くの場合、相手への愛情確認や関係性への不安です。試し行動に直面した際は、感情的にならないこと。まずは冷静に状況とその背後にある心理を理解できるよう努めましょう。
お互いの気持ちを尊重し、オープンなコミュニケーションを心がけることで、二人の絆はより一層深まるはずです。

再木 奈生
シニア産業カウンセラー/キャリアコンサルタント/ポジティブ心理学コーチ
サンマリエでは、社員教育研修、会員向け婚活セミナー講師として活躍中