いくらあなたのことをいいなと思っていたとしても何も反応がなければ、相手の気持ちは醒めていきます。それは、情熱って持続しないものだからです。だって私たちはロビンソンクルーソーのように孤島で暮らしているわけじゃないんですから、他にかわいい子や気になる子はたくさんいて当然です。もしかしたら彼は今誰かとラブラブになっていて、二股かけてはいけないからと引いていったのかもしれません。あいまいな状態にしておけばそうなるのは当たり前のことで、相手の気持ちを見極めてからどうのこうのという姿勢自体が間違っています。
　あなたの態度は、相手を品物のように値踏みする買い物感覚のように感じられます。これは最近のひとつの傾向で、みんなバカみいたいに買い物ばっかりしているからこういうことになるんじゃないかと思うんです。
　相手がいい感じかどうかは、相手と関係を作ってからじゃないと分からないことです。相手の気持ちを確かめるのではなく、自分が好意をもっているならそういう方向で努力することが大事なのです。
昔の物理学の発想は、天体の動きなどを観察するのに高いところから見ていて、そのシステムに自分が含まれていませんでした。客観的に物事を見ていて、観察者がその中にいない。そういう考え方で200？300年とやってきたわけです。しかし、現代物理学では、見る人間、観察するという行為そのものが相手に影響を与えるという考え方です。あなたの場合もまさにそのとおりで、あなたは相手を「あーじゃないか、こーじゃないか」と観察していたわけで、その見るという行為自体が彼にはマイナスのことと写ったのでしょう。そういう形で、彼との関係を変えてしまったわけです。つまり、あなたには、自分が当事者なんだという認識が欠けています。そういうところが抜けてしまっていて、何か客観的に冷静に相手が見える、あるいは相手を見たいと思っている。これは間違いで、多少不愉快な思いや失敗をしたり、悔しい思いをしながらでなければ真実は見えません。
　自分がぜんぜん傷つかずに、相手のことだけを探り出そうという発想はやめたほうがいい。恋愛だから許されると思ったら、それはちょっと思い違いです。だって、これをもし友だちにやられたらイヤじゃないですか？「一緒に映画に行かない？」とかいろいろと誘っているのに、相手の本心をうかがっているヤツが本当に友達としてふさわしいかどうか？　もしそんなことをあなたがやられたら、もう二度と誘う気が起きなくなってしまうでしょう。
　先に情熱は長続きしないものだと言いましたが、 一人の人を何年も思い続けるということはあります。それは、それだけの忘れられない強烈な何かがあったわけで、そういうものが何もないのにちょっと見かけたというだけで何年も相手を思い続ける人がいたとすれば、それは変態です。
　例え手の届かないスターだとしても、その人の映画を何度も何度も見たり、CDを何度も何度も聞いたりして、ますます好きになり一生フアンであったりするわけです。それは一方通行のようですが、相互作用なんですね。例えそのスターが死んでしまったとしても、表現者として相手が発信している限り、コミュニケーションは成立するのです。何もせず、何も関係が発生することなしに相手を思い続けるなんてことは、まずないと思っていい。ずっと思い続ける人はそういう幸せな関係を作ることに成功した人たちで、そういう人たちがいることは事実です。それはいいなと思いますし、可能なことです。あなたもそういう関係をぜひ作るよう、がんばってください。