肉体関係もあって、部屋の合い鍵ももらっているのに、「彼のことを知らない」とか「気持ちを確かめていない」と言う……これはとても今風だと思います。僕の世代から見れば「それはもう夫婦でしょう」という関係でも「つき合っているかどうか分からない」……体の関係や一緒に過ごす時間の長さだけで人間関係の深さをはかれないということです。これは「つき合う」というような言葉が氾濫しすぎているのも一因だと思います。「つき合う」ということが一体どういうことを意味するのかをみんなに聞いてみれば、人によって捉え方がずいぶんと違っているでしょう。一緒に遊びに行ったりするのがつき合うことだと考える人もいるでしょうし、つき合う＝ベッドを共にする意味だと思う人や、ベッドを共にしてもつき合っているとは思わない人もいて、捉え方はそれぞれ違うはずです。このように「つき合う」という意味すら曖昧なのに、彼はその曖昧な言葉すら言っていません。つまり、彼に欠けているのはコミットメントすることです。コミットメントを日本語に訳すと「積極的に参与する」という意味で、さらに詳しい意味のひとつとして「宣言」があります。
　米国の心理学者スタンバーグは恋愛に欠かせない要素として「親しみ（Intimacy)」「情熱（Passion）」「宣言（Commitment）」の3つをあげています。これは「愛の三角形」と呼ばれていますが、問題はそのバランスです。恋愛は二人の関係なんだから、二人さえよければ良いという考え方があります。こういう人が結婚すると、自分の家族さえ幸せならいいという家族孤立主義、家族モンロー宣言みたいなことになってしまいます。そういう人は周りの人とのつき合いがないので、いざ子供がいじめられたり、非行に走ったりなんてことになると困ってしまいます。まあ、そんなに先のことを心配しても仕方ありませんが、本人同士の問題をどう社会的な問題にしていくか、というのが結婚のシステムであったりするわけです。何も結婚というカタチをとらなくてもいいのですが、二人の関係をその場限りで終わらせないためには、二人はパートナーであると公言すること=コミットメントが必要なのです。彼の場合もコミットメントが欠けていて、そういう社会的な関係を無視しているところが弱点です。問題はコミットメントがヘタな人はずーっとヘタで、人に何か言われないと何もしないいというパターンになります。そういう人は人からあまり信用されませんから、仕事のうえでもいまひとつ評価されないでしょう。
　そこでどうしたらいいかですが、こういう人は肯定法でしゃべれないところがありますから、「まさか私のこと遊びだと思っていないわよね？」とか「使い捨てとか便利な女だとか思っていない？」と聞いてみるのがいいでしょう。「いや、そんなことないよ」と否定形で答えれば、「コミットメントするのはヘタだけれど、一応自分のことを大切に思っているのだわ」と分かると思います。そんなことを聞くと嫌われるんじゃないかと思うのは間違っていますし、彼のためにもなりません。実際言われたってしょうがない状況ですし、このままでは社会的にも損なことですから言ってあげたほうが親切です。それからもう少し言わせていただけば「これからどう生きていくのか」「社会情勢についてどう考えているのか」など、普段から彼の考えていることをもっと聞くようにすることです。彼は年上ということなので、いろいろおもしろいことが聞き出せるかもしれません。そういう意味で、あなたはもったいないことをしていると思いますよ。